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新英語教育研究会神奈川支部HP

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シークレット Secret

Secret     シークレット ♪マドンナ(Madonna)

●歌手とこの曲について:マドンナは、本名がマドンナ・ルイーズ・チッコーネ(Madonna Louise Veronica Ciccone)で、1958年生まれで米ミシガン州出身。1984年に「ライク・ア・ヴァージン」がヒットして以来、マリリン・モンローのようなセックス・シンボルとして現在に至るが、イメージの変遷を遂げ、映画女優、監督など多彩に活動、また、ベジタリアンという一面を持つ。
この曲は1994年の全米チャート最高3位。アルバム『ベッドタイム・ストーリーズ』に収録。

●文法で展開:loveは「愛している」という意味では通常は進行形にしない。(ゆえに、I love it.を現在進行形にしたコピーを広告で使うfast foodの老舗・マ●ド●ル●のCMはおかしい!) 歌詞の20行目でloveを過去進行形にしているところは、現在完了形のI’ve never loved anybody else.(だれも[今までに]愛していない)が適切だと思う。(が、マドンナの歌なのでloveを性愛的な意味で言っているかも。進行形でOKなのかな?)

●内容で展開1:幸せとは「足るを知ること」
歌詞5行目のHappiness lies in your own hand.(幸せはあなた自身の手の中にある。)と似ている構文のHappiness lies in contentment.(幸せは満足にある。)を引用。この格言は「足るを知る」「知足[ちそく]」を意味しているので、さらに、そのテーマを扱った森鴎外の短編小説『高瀬舟』に言及。
加えて、脚本家の山田太一さんのことばを紹介。人はよく「可能性があるなら追うべきだ」「あきらめてはいけない」ということを言うが、この流れ図でいくと常に「乗り越えるべきもの」があり、「それに至らない自分」ということになり、自分に満足しないので、自分を落ち着いて愛せないことになってしまう。ゆったりと生き、日々を味わうには、自分の限界を知って、その限界を認めることで自分が愛せるようになり他人も愛せるようになる。これは可能性を追う中ではできない(2006.1.2 NHK第2放送「NHKカルチャーアワー」の講演の一部を整理・加筆)。知足は、安住や怠惰とは異なる。私は山田太一さんのこの見解に同意する。

●内容で展開2:「幸せ」「愛」はどこにある?
 マドンナはマスコミに流されるゴシップで私たちが知る限りでも、その半生は波乱に満ちている。そんな彼女だからこそ、実感を込めて歌うことができる歌だと感じる。そこで、人生が波瀾万丈という点でマドンナと酷似する、喜納昌吉さんが歌う「愛は私の胸の中」を紹介。
 
幸せや愛は、どこか遠くにいるはずの他者の中に求めるものではなく、「今ここに」「私の中に」あるというメッセージ。同じテーマはメーテルリンク『青い鳥』の物語も教えてくれており、「常識」と言ってもいいくらいなのかもしれないのだが、その意味を実感するまでにかかる時間には個人差がある。チェーホフ『犬を連れた奥さん』は、30代後半という設定の妻帯者のグーロフが人妻のアンナと愛し合うようになる短編小説。「グーロフは女たちと知り合ったり、親しくなったり、別れたりしたが、愛したことは一度もなかった。その他のものは何でもあったが、愛だけはなかった。そして頭が白くなり始めた今、グーロフはまともに、ほんとうに、生まれてはじめて愛したのである」とある。30代後半で本当の愛を知ったグーロフより年上の私は、ちょっとあせってしまう。愛を知っているのかと。う~む。しかし、こんな自分よりも、10代にして波瀾万丈の人生を経たり、愛のない、荒れた環境に身を置き、絶望を口にしたりする生徒がいるので、心配になってしまう。せめて授業で心和む歌や詩のことばを花束のように贈るように心がけている。今回の選曲は高3のS君に向けてだったのだが、少しは和んでくれたかなぁ。

●内容で展開3:愛は私の中にある
Until I learned to love myself, I was never ever lovin’ anybody else.(私が自分を愛するようになるまで誰も愛していなかった)という一節がこの歌の要(かなめ)だと思う。こういう話題になると「自分自身を愛することはできない、なぜなら…」と、自分の容姿・家庭環境・貧しさなどの不遇を嘆き始める人がいる。
内田樹(たつる)さん(神戸女学院大学教授)は、ブログ記事「自立と予祝について」(2010/11/08)において、「私たちは自分が欲するものを他人にまず贈ることによってしか手に入れることができない。」と断じている。自分は貧しいので与えるものがないと言って、与えることなく受け取るだけの人は、その言葉によって自分自身に「呪い」をかけており、贈与と返礼のサイクルから押し出されてしまう、それはあたかもボールゲームで受け取ったボールを決して手離さないプレイヤーに誰もパスしなくなるのと同じだ、という。そこで私は宮沢賢治の『ツェねずみ』を思い起こす…、このように私の「幸福論」は切りがないので、ここらで筆を置こう。ラッセル『幸福論』が英語の授業から失われて久しい。皆さんも幸福についての授業を「うれしく展開させて」ください。(岡本太郎『自分の中に毒を持て』青春文庫 p. 79参照)  

参考1:内田樹(たつる)さんのブログ(blog.tatsuru.com)は毎日2万件ヒットするほどの人気で、教育関係の言及が多いのでオススメ。
参考2:Queenの「Under Pressure」はWhy can we give love, give love…?と路傍の人々(people on the street)へ愛を与えるように訴える歌。併せて授業で扱いたい。
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■ Secret Madonna シークレット (♪マドンナ)

1.  “ものごと”は同じではない
2.  あなたがわたしの人生に関わって以来
3.  あなたは私の魂に触れる方法を見つけた
4.  私は決して決して決して手放したりしない

5.  幸せはあなた自身の手の中にある。
6.  [上記のことが]わかるまで長くかかりすぎたわ
7.  (幸せが)どんなものでありうるか
8.  あなたがあなたの秘密を私と共にするまでは

9.  ‘何か’起きかけている
10.  ‘何か’ 起きかけている
11.  ‘何か’が私に起きかけている
12.  私の彼は‘秘密’を持っている

13.  あなたは私に 《パラダイス》 を取り返してくれた
14.  〈 それを/私は思っていた/私は永遠に失ったと〉
15.  あなたのおかげで私は 《理由》 が分かった
16.  驚きだった/あなたが[理由を]分かっていたとは
17. =あなたがずっと知っていたとは…
18. 私が決して言いたくなかったこと
19. =私が自分を愛するようになるまで
20.  誰も愛していなかったのだ、ということ
Refrain 5~12、9~12、5~12、9~12
21.  私の彼は‘秘密’を持っている
22.  私の彼は‘秘密’を持っている
23.  私の彼は私との‘秘密’を持っている


Happiness lies in contentment. 幸せは満足にある。
足(た)るを知る=知(ち)足(そく)  →森鴎外『高瀬舟』


「愛は私の胸の中」を聴くと、私の気持ちを言い当てているような気持ちになります。
「島唄」を作ったBoomの宮沢和史さんの作った曲だと分かり、納得です。
「愛は私の胸の中」 
作詞&作曲:宮沢和史
歌:喜納昌吉&チャンプルーズ

 


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